8 転機

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「お兄ちゃん!!!」 町の門が開くと、すぐに聞き慣れた声がした。 「本当に…本当に心配したんだから…」 その声は今にも泣き出しそうな感じであった。 駆け寄ってきた楓香はオレに強く抱きつくと、その横顔をオレの胸元にぴったりと当てたまま動こうとしない。 「大丈夫やって。 おまえだけ残して死んだりせえへんから」 「…本当に…? …じゃあ約束して…」 妹は顔を上げてそう言うと、背伸びをして瞳を閉じる。 って、マジで?! これってキスしろってことやんな?! いやいや、アカンやろ! しかも、みんなおるし! いや、そら確かにさぁ…。 本音はもっとギュッてして、ブッチューいきたいよ! でも、やっぱ妹相手じゃマズいよな…。 なんか知らんけど、そういうとこ無駄に理性が働くんよな。 これから全部のポイント、度胸の補正にまわして理性抑えたろかな…。 「ご主人様…。 妹君との後は、私にも今回の褒美ということで口付けを…」 なんでやねん! おいおいローズまでどうしてん?! てか、褒美とか言ってるけど、実際は放置プレイやったような気がせんでもないけど…。 でもまぁ、ローズおらんかったら確実に死んでたよな…。 「べ、別に…お兄ちゃんとキ…キスしようとしてた…とかじゃないもん!」 顔を真っ赤にしながら楓香は否定し、オレから離れた。 おそらく、ローズが声に出して言った「口付け」という言葉に反応し、我に返ったのだと思われる。 「そうですか。 では、私も今はご遠慮させて頂きます。 公衆の面前でございますしね」 お? 丸く収まった? てか、これって実はローズが助け舟出してくれたパターンか? 「失礼致します」 一段落したオレたちに声を掛けてきたのは、アリシアのお供…近衛の2人であった。 アリシアの傍に仕えるエルフは常に武装をしている。 だが、その姿というのは身軽さを重視してなのか?兜は装着しておらず、レオタードのようなインナーの上に肩当てや胸当て、篭手や脛(すね)当てなどの部分的な防具を装備をしているだけである。 ちゅーか、ほんまセクシーやねんな…。 特に太ももとか…スタイルええし…結構美人やし…。 目のやり場に困るんよな…保養にはなるけど。 「どうしたん?」 「お疲れの中、大変申し訳ないのですが、宮殿へお越し下さい。 お話がございます」 つい先程、人間達を退け戦闘に勝利したばかりである。 警戒に当たっていた兵や一般のエルフ達が喜んでいる中、彼女達だけがまだ緊張感を漂わせていた。
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