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「とりあえず、なんでエルフがこの島におるかはわかったわ。
ほんでやな…。
王国って何の実験してんの?」
「…それはわかりません。
ただ、これは推測なのですが、構いませんか?」
「もちろん」
リースベットの表情から察するにきっと良くない話であるのは明白であった。
「おそらくは、人為的な魔道具の作成かと…」
「魔道具って、ローズとかケンケンみたいなやつ?」
「いえ…そのような大それた実験ではないかと…。
意思を持った魔剣や魔鎧は私にもどういう原理なのかが全くわかりませんし、短命である人間がそういった存在を信じているかさえ疑問です。
大抵の人間は御伽話程度にしか思っておりませんので」
そういえば、そんなようなことアリシアも言っとったな。
普通の魔人が魔剣とか触るだけでもヤバいのに、それが喋りだすとかあり得へん的な。
「ん?
じゃあ、どういうこと?」
「本来、魔道具とは、その名の通り魔力が動力源となっております。
ですが、彼ら…人間という種族には魔力がありません。
そこで、代用品としてクリスタルというものを普段は使用しているのですが、戦闘で使えるか?となると、とても使い物にはならないのです」
おお、クリスタルって町の市場で見たあれやな。
確かに日常生活くらいでしか役に立たんやろうなってもんばっかりやったな…。
「で?」
「魔力含有量の少ないクリスタルは使用せず、道具そのものに予め大量の魔力を注ぎ込んでおく。
その道具の開発、実験を繰り返しているということでございます。
ですが、ここで1つの問題が生じます。
それは、実験の使用する道具に注入する魔力をどこかから確保しなければならないこと。
そこで、強い魔力を持った種族からその魔力を奪い取るということを思いついた。
しかし、より大きく大量の魔力を得ようと考えると、それだけ強い種族を生け捕りにする必要があり、それは非常に困難。
そのため、模索した結果、強い魔力を持つ種族の小さな子供をさらうという考えにヤツらは至った。
と、いうところでしょうか?」
オレの問いに対して、そう答えたのはリースベットではなかった。
「そ…その通りです…」
リースベットは呆気に取られながら、その説明の内容を認める。
今まで黙っていたローズがいきなりスラスラと喋り出したのだ。
さすが、それ専門というか、なんというか…。
あんまりにも的確過ぎたんやろうな…。
ふと隣を見ると、ローズが何か物欲しそうな顔でオレを見ている。
その感じ…あれか…。
「さすがやな。
わかりやすかったわ、ローズ。
ありがとうな」
オレがそう言って彼女の頭を優しく撫でてやると、とても満足そうな顔をする。
だが、その一方で楓香の機嫌が少し悪くなったような気がした…。
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