13 砦

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13 砦

「うお! 何やアレ?!」 空が薄暗くなってきた頃、進行方向に要塞のような建造物がオレの視界に入ってきた。 王国の首都であったリベラのように巨大ではないが、その城壁など、建築物としての造りに関しては引けを取っていない。 「あれは「ナウード砦」ですね。 ドワーフの町へ行くためには、あそこを通過しなければならないのですが…」 少し不安そうな表情でオレの顔を見ながらそう言ったアリシア。 彼女が言葉に出さなかったその先の意味。 それは、オレたちが魔人であることを隠しきれない、という事であろう。 当然、あの場所を行き来するには検問があるはずだ。 楓香は魔人、エミは獣人。 どちらも、この島にいてはおかしい存在であり、仮にフードで頭を隠しても、明らかに怪しいと判断されるだろう。 「まぁ、とりあえず、それはええとして…。 何でこんなトコに砦なんてあるん?」 オレがそう質問をすると、アリシアは荷台の中で、この島の地図を広げて教えてくれた。 この砦は、西にあるドワーフの町を警戒して造られたものであり、かつ、交通の要所でもあるそうだ。 まず、ドワーフへの対策という点に関してだが、彼らは個体数が少ないとはいえ、元々が好戦的な種族だからだそうだ。 武器の製造能力や腕力、それらを警戒してのことだろう。 また、交通の要所でもあると言ったが、それは北にある港町から大草原の外側を囲むように大きな街道があり、それがここに繋がっている為だ。 オレたちが通ってきた草原のど真ん中とは違い、道幅はとても広くて整備されており、道中には中継地点の役割を担うような、いくつかの町や村が存在する。 大陸から輸入したものを、北の港町からリベラへ運ぶことを考えた場合、遠回りで時間もかかってしまうことにはなるが、大量の物資を何台もの荷馬車で輸送するため、途中で休息が取れたり、荷馬車の修理なども行えるこちらのルートを通った方が無難であると言える。 つまり、オレたちが今まで通ってきた道は、近道ではあるが、ほとんど使われていないマイナーな道だったのだ。 この砦は、北の港町と南にある首都を繋ぐ中間地点。 島の西側に位置する交通の要所なのだ。 「さて…と…」 オレはそう呟いて、外の様子を窺う。 アリシアの話を聞いている間に、オレたちが乗っている荷馬車は砦のすぐ近くにまで進んでいたのだ。
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