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14 ドワーフの町
「フィンクローフ」、レイリア島西部に位置する町の名である。
そこはドワーフ達が暮らす町であり、オレたちが今いる場所だ。
町に到着すると、アリシアとシルヴィアがある程度の事情を説明し、特に揉めることなくスムーズに町の中へと案内される。
建築なども手掛けているドワーフという種族。
その技術力の賜物といったところか、この世界でオレが目にしてきた場所の中で最も発展した場所のように思えた。
だが、残念な点がある。
それは建物だけではなく、ありとあらゆる物がオレたち人間…元い魔人やエルフのそれよりも二回り程小さい点だ。
実際に見るドワーフは、オレがアニメやゲームで得た知識通りの小柄な種族であり、簡単に言えば小人である。
その風貌は、抱いていたイメージ通りで、茶髪で長い髭を蓄えており筋肉隆々であった。
ただ、意外だったのは、女性のドワーフは線が細く髭は無い。
一言でいうと、かなり小柄な人間といったところである。
その事から、オレがナウード砦のすぐ近くの集落で見かけたのはドワーフの女性だったという事がココに来てわかった。
この世界の人間というのは基本的には金髪で青い瞳をしているという認識なのだが、集落で見かけた女性は茶髪で余りにも小柄であった為に気になってしまったのだ。
ちなみに「基本的に」と言ったのは、人間の老人は普通に白髪が生えているからである。
町の奥へと進んでいくと、大きな宮殿が建っていた。
そのすぐ後ろには大きな山がある。
荷馬車から降りたオレたちは、建物の中へと案内され大広間へと通された。
この町に於いて、宮殿だけはオレたちが基準としているサイズよりも十分に大きく造られており、窮屈な思いをすることはない。
おそらく、人間やエルフとの会談など、そういった場の機会を考慮して建てられたのであろう。
「ご無沙汰しております、ヴォルテル様」
アリシアは広間の奥の玉座に座っているドワーフに対して挨拶をする。
てか、前から思ってたけど何で宮殿なん?
一応、リフィス王国っていう人間の支配下に置かれてるし、名目上は町やろ?
それやのに、玉座の間って事は王がいるって事やし、それって国やん。
そういえば、ガウィンディでもアリシアたちに直接呼ばれたことないけど、この前、レベッカに宮殿案内してもらった時に玉座の間っぽい部屋あったよなぁ。
後に聞いた話であるが、アリシアと、今オレたちの目の前のいるドワーフの長は大陸に存在する国の王族であるらしい。
かなり以前の話になるようだが、大陸では人間からの提案で、ドワーフとエルフ、人間との三者間で友好条約が結ばれたそうだ。
そういったことがあり、現代で言うところの大使館のような感じで建設を認められたのだという。
そして、もう一つ要因があるようだ。
先代リフィス王が亡くなるまでは、それぞれの町は完全に自治区として存在していたらしい。
人間からの干渉もほとんど無く、国に納める金額も法外なものではなかったそうだ。
現状と比較すればの話になるのかもしれないが、かなり寛容な政策であったという。
リフィス王国側から考えれば、個体数の少ないエルフやドワーフは軍事的な意味に於いて、さほど脅威ではない。
今とは逆に、彼らの機嫌を損ねないようにして、ドワーフ達の持つ技術や、エルフ達の協力を仰ぎ国を発展させてきたのだという。
「久しぶりだね、アリシアちゃん。
元気にしてたかい?」
「おかげ様で。
ヴォルテル様もお元気そうで何よりです」
アリシアが一種の社交辞令的な挨拶を終えると、優しそうに見えたドワーフの眼光が鋭くなる。
「で、今日はどういった話かな?
顔触れを見ると、只事ではないようだが…」
そう言った彼の声のトーンは低く、凄みのようなものが含まれていた。
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