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17 レイリア島東部
「おお…、なんか思ってたよりも賑やかやなぁ」
「だよね。
私もこんなに大きい町だとは思ってなかったよ。
お店とかもいっぱいあるし」
時刻は13時を過ぎた頃、リベラを出発したオレたちは、ラルフが治める東の管轄に入ったところの町に来ていた。
農業や畜産を担当している地域だと聞いていたので、この町の規模はオレたちにとっては意外なものであった。
「まぁ、東側だと、この町以外は全部小さな村しかねぇからな。
せめて、ここだけでもコレくらいの規模がないと成り立たねぇんです」
うん…。
こいつもシルヴィアと一緒で、敬語のようで、ちょいちょいタメ語入ってくんねんな…。
まぁ、ええけど。
「ねぇ、お姉ちゃん。
エミ、お腹すいた」
「そうだね。
お姉ちゃんもお腹すいた。
ねぇ、お兄ちゃん。
どこかお店に入ってごはん食べようよ」
「せやな。
なぁ、ラルフ。
どっか、ええ店知らん?」
「…え?
あ、ああ…」
どうやらラルフは何かに意識を取られていたようで、オレたちの会話を聞いていなかったようだ。
「てかさ、おまえ、さっきから何キョロキョロしてるん?」
「あ、いや…その…」
オレの方を見て、しどろもどろになりながらもオレに何かを伝えようとしているラルフ。
そんな彼の背後に誰かが近づき、その肩にポンっと手を置く。
「見~つ~け~ま~し~た~よ~」
「ヒッ!!!」
ラルフの顔から血の気が引いていくのがわかる。
何者かは、彼の肩に乗せた手を使って、そのままラルフに正面を向かせる。
「ゲフッ!!!」
そして、鮮やかなボディブローが彼の鳩尾(みぞおち)に決まった。
空腹だったからなのか?それとも力をセーブしていたからなのか?はわからないが、彼の口からゲロが出なくて良かった、などと冷静に思う。
「やっと見つけましたよ、クラウゼヴィッツ将軍!
毎回毎回、どこをほっつき歩いてるんですか!
ちょっとは部下の身にもなって下さいよ!」
「す…すみません…」
一撃ノックアウトでグロッキー状態のラルフが力を振り絞って彼女に謝る。
そして、一体何が起きているのか?がわからず、ポカンとして見ているオレたちと、その女性の目が合った。
「!!!
く…黒髪に黒目って噂の殺人犯じゃない!」
いやいや…今更かよ…。
てか、絶対遠目からでもわかるやろ…。
ひょっとして天然?
「…こ…この人たちは大丈夫だから…」
地獄のような苦しみなのだろうか?
悶絶しながらもラルフは彼女にそう告げる。
「そうなんですか?
まぁ、将軍がそう言うのならそうなんでしょうね。
あの、すみません。
これでもうちの将軍なんで、ちょっと連れて行きますがよろしいですか?」
「ええ、お構いなく。
私たちは、この町におりますので、用が済んだらそうお伝え下さい」
ちょ!
ローズさん…?
「わかりました。
では、行きますよ、将軍」
へたり込んでいたラルフは、襟首の後ろを掴まれ、引きずられながら何処かへと連行された。
「おいおい、ローズ。
あいつホンマに連れて行かれたけど、大丈夫か?」
「問題ないと思われます。
あの人間はアレの部下のようでございますし。
…それにしても、剣の腕はそこそこですが、近接格闘はからっきしみたいですね」
「…みたいやな…」
「そんなことよりも、ご主人様。
アレの事は放っておいて、お昼に致しませんか?
妹君もエミも空腹のご様子ですし」
そういうトコ、めっちゃドライやね…ローズさん…。
アレでも一応オレの部下になったヤツやねんけど…。
とりあえずオレたちは適当な店を探して昼食をとることになった。
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