19 会議

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19 会議

異世界生活18日目。 今日は朝から慌しい。 バルタザールの襲撃により、会議が今日になってしまったからだ。 明日には帝国が誕生する。 本来であれば、昨日のうちに進捗や決定しておかなければならない事項の確認、今後の方針を決めているはずだったのだが…。 「やはり首都は「ガウィンディ」がふさわしいと思います。 フーガ様が初めて訪れた町ということもありますが、その名前には運命を感じます」 「いや。 発展を考えるのなら「ナウード砦」を中心に発展させるべきだ。 すぐ近くにはこの島の生命線とも言えるべき水晶鉱山もある。 なにより、島の交通の要所なのだぞ」 「いいえ、ガウィンディにするべきです。 精霊の加護を受けているエルフの町ですよ。 きっと、そうなるように導いてくれているに違いありません」 「何を言うかと思えば、精霊の加護を持ち出してくるとは。 しかも、帝国の名前がすでに「ガ・ウィンディ」と決まっておるからもうよいではないか。 そもそもガウィンディは森の奥、そんな場所で首都としての機能が果たせるとは思えぬが?」 「う…。 確かに森の民として、森を切り開いて発展させることには抵抗があります…」 「そうであろう。 ナウードであれば、森を開拓しなくとも町は大きくなる。 しかも、すぐ近くのフィンクローフには、手に職を持ったドワーフも大勢いるのだ。 現に西門付近では、すでに城下町のようにドワーフも移住して規模が大きくなっているではないか」 「しかし、首都ということになれば、ドワーフサイズの建物だけとか、ドワーフ好みの食事だけというわけにはいかなくなりますよ!」 「う…。 確かに二度手間になるし、住みにくくなるかもしれんな…」 「う~」 「うぬぬぬぬ…」 オレが拠点とする場所…つまり首都をどこにするかでエルフであるアリシアとドワーフのヴォルテルが対立していた。 「お二人とも。 熱くなるのはやめて下さい。 陛下の御前ですよ」 「クラーラの言う通りだ。 明日からは帝国が誕生する。 二人が言い争うのは無意味なことだ。 全ては皇帝陛下のご意思のままに」 クラーラとシルヴィアの人間コンビが仲裁?に入る。 本心かどうか?は別として忠誠を誓ってくれている感じはする。 てか、オレ自身のことやけど、独裁感すげぇなぁ…。 下手しぃ、なんかの宗教の教祖みたいに捉えられてる? 「なぁ、楓香。 首都ってどこがいいと思う?」 「よくわからない。 でも首都っていうくらいだから、島の真ん中とかが良いような気もするよね」 「まぁ、確かにそうなんかもしれんけど…。 島の真ん中っていったら何もない草原やで…。 ローズはどう思う?」 「妹君のご意見に賛成でございます」 「草原のど真ん中に首都を一から作るってことか? めっちゃ大変な気がすんねんけど…。 しかも、川とか湖もあらへんし、飲み水とかどうすんねん?」 「その点に関してですが、私にある考えがございます」 ある考え? 全然思いつかへんねんけど…。 てか、何? あのローズの自信あり気な笑み? 一体どうするつもりやねんな。
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