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20 帝国誕生
異世界生活19日目の昼12時。
オレは皇帝になった。
小さな島ではあるが、自分の帝国を築き上げたのだ。
特に目的もない異世界生活、気付けば流れと勢いでここまで来てしまった。
しかし、いざ皇帝になってみると、何となくだが感慨深いものがある。
現在オレたちはナウード砦にいるのだが、12時になると同時に、一斉に帝国の旗が掲げられた。
それらの国旗は黒がベースで、中央に「双頭の鷲」が描かれている。
なぜ、そのような旗にしたのか?についてだが…。
単純にカッコよくね?
ただ、色的に、遠目から見たら海賊旗に見えなくもないけど。
見た目の格好良さもあるが、実はこの国旗、一応は意味がある。
黒旗はアナーキズムの象徴。
つまり、無政府主義だ。
帝国という無政府主義とは真逆に位置する独裁国家にも関わらず、それを採用したのには訳がある。
と、言ってもオレの勝手な解釈なのだが。
政治、社会、権力を排除する思想には秩序の観点から考えても賛同できないものの、個人の完全な自由と独立を望む思想には共感が持てる。
そもそもオレは権力を振りかざすつもりもない。
なので、元々この世界で暮らす種族を統一し、各々が上手く調和すれば良いと考えている。
また、この世界で、オレと楓香のように異世界から来た存在が他にもいるのかどうか?はわからないが、基本的にオレたち兄妹だけがこの世界に於いては部外者であるという考えをオレは持っている。
つまり、双頭はオレと楓香のことを表現しているのだ。
ちなみに鷲は古くから最高神の使者と考えられていたそうだ。
オレたちの場合は、神様…魔神に召喚されているという点も考慮している。
てか、あのチビっ子って名前なんて言うんやろ?
「ご主人様、昼食後はフィンクローフへ赴く予定でございますが、出立時刻は如何なさいますか?」
帝国誕生というこの瞬間ではあるが、オレたちは普通に塔の上から国旗が掲揚されるのを眺めていた。
就任の挨拶を含むようなセレモニーは一切予定していない。
帝国樹立と言っても、民からすれば、ただ単に島を治める支配者が変わっただけだ。
生死に関わる程の重大事項ではないので、いつも通りの日常を過ごして欲しいという願いもある。
とは言っても、一斉に見たこともない国旗が掲げられたらそうもいかんねんやろうけど…。
特に人間…、昔っから悪魔って思ってる魔人に支配されるってことやもんな…。
「2時くらいでええんちゃう?」
「かしこまりました」
一応は島を統一したという事を確認するため、今日から各地を視察する予定だ。
そして、エルフたちに関してはアリシアを残し、ガウィンディに戻ることになっている。
ちなみにエルフ族はリースベットが中心となって治めることになった。
ロリではないが、普通に綺麗なお姉ちゃんに見えるリースベット。
実は彼女、200歳を超えているらしい…。
そのため、昨日は、生まれた時から今までの約200年という長い期間で彼女が起こしてしまった出来事のダメだしを、レベッカに延々と説教されてたらしい…。
にしても、あんだけの長時間、説教されてたって事考えると、なんかどんどん話がすり替わって行って、色んな事で怒られてたんやろうな…。
結果、解放された時の彼女は放心状態だったらしく、何も考える気力がないタイミングでアリシアが自分の意見を通したという流れらしい。
でも、いくら説教されてるって言っても、あの知的なリースベットが反論せんかったとは思えんよなぁ。
ちゅーことは、レベッカって実は相当な実力者?
能ある鷹は爪を隠す的な?
まぁ、年齢も年齢やし、一応頭の片隅にでも入れとこ。
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