22 始まりの小屋

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22 始まりの小屋

「ご主人様、準備が整ったようでございます」 「ほな、行くか」 異世界生活21日目の土曜日、天候は珍しく曇りである。 ガウィンディで食料などを積み込んだ後、町を出発。 昼過ぎには、オレたちがこの世界に来た時の小屋の前にある湖のほとりでバーベキューをしていた。 「どうした、アリシア? なんか浮かない顔してるやん」 「いえ、森の民として、森を焼き尽くすのはちょっとどうかなって思いまして…。 一応は精霊の加護を受けている身なので…。 この間のナウード砦の件もありますし…」 確かに、彼女の言う通りかもしれない。 森に入ってから小屋までの道のりは荷馬車が通るには狭すぎたので、楓香に頼んで邪魔な木々を焼き払ってもらったのだ。 ちなみに、ナウード砦の件というのは、シルヴィアと初めて出会った時に魔人の実力を見せ付けるために楓香が近くの森を焼き払った件である。 「ちゅうか、アリシアが加護を受けてる精霊って何なん?」 「ドライアドです」 あ、やっぱり。 てか、ついに固有名詞出てきたな…。 ま、そうやろうとは思ってたけど。 てか、エルフの寿命が長いんも、樹の精霊の加護があるからなんかな? 樹齢が数千年っていう樹も結構あるみたいやし。 「何も心配することはありませんよ、アリシア。 あなたが直接手を下した訳ではないのですから」 「そういうものなんですか?」 「そういうものです。 それにドライアドの逆鱗に触れるほどの木々を焼いてしまったわけではありません。 そういった、悪いことをしてしまったと反省できる心があれば大丈夫でしょう」 「なんや、ローズ。 えらいアリシアに対して優しいやん?」 オレが冗談っぽくそう言うとローズが近くに寄ってきた。 「…だって、ご主人様が親しくしてる相手にいつまでもツンケンしてるわけにはいかないじゃないですか」 小声で少し拗ねた感じでそう告げるローズ。 美人やのに、可愛いとか反則やろ…。 まぁ、何にしても、仲良くやってくれるって事はオレにとってはありがたいよな。 「てか、精霊にも詳しいんやな」 「いいえ、適当に言ってみただけでございます。 精霊の考えなど、私にはわかりませんので」 「おいおい、マジかよ…。 てか、ドライアドの件って大丈夫なんか?」 「もし何か手を出してくるようであれば、返り討ちにすれば良いだけでございます。 何も心配することはございません」 うん…、心配事を増やしてくれて、ありがとうローズさん。
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