第23話 悪漢

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「この時期に手に入れるのは大変なんだぜ」 ヘラヘラというラウル。 インドで灯油はなかなか手に入らず、しかもポリタンクではなく、市販されている飲料水などが入ってい空ペットボトルに入れるのが主流だ。 灯油をかけられた男の顔が、次第に青ざめていく。 ラウルは、自国のインド映画よりも欧米の映画が好きだと話し出した。 特にクライム映画が好きらしく、『トレインスポッティング』の原作者である作家、アーヴィン・ウェルシュの小説が原作のクライムコメディー『フィルス』は何度も観たと笑みを浮かべている。 最近に観た映画はメキシコの麻薬密売組織の話で、身動きできなくさせた裏切者に大量のガソリンを無理やり飲ませて、その目の前に発煙筒を置くのが面白かったと言う。 「人間はガソリンを飲まされれば、当然身体が拒否反応を起こして吐き出そうとする。吐いたらどうなるか言わなくてもわかるよな」 楽しそうにいうラウル。 もし嘔吐(おうと)すれば発煙筒がガソリンに引火して、一気に口から内臓まで燃え上がる。 ラウルの言う通り、そんなことは誰でも想像できた。 ラウルは続ける。 「でも灯油ってどうなんだろうな。ガソリンほどじゃないのか、それとも同じなのか、試してみたくてよ」     
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