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しかし、ニューデリーへ向かう前にカトマンズで知った情報なので、本来の目的は師である西条紅雄の家族、つまりソウであり、そのことは一緒に来たラドにも言ってない。
女性と聞いたレットは恋人かどうか訊こうと思ったが、ノリの悲壮感が漂う表情を見て、訊くのをやめた。
レットは口角を上げて言う。
「しかしあれだな。インターネットやスマートフォンでいつでも繋がっているっていう時代に、そんなアナログな人探しをしている奴がいるなんてたまげたよ」
「変ですよね。時代遅れもいいとこだ」
苦笑いをするノリ。
「それに……」
ノリはそう言うと、ポケットから輪ゴムで止められた札束を出して続ける。
「これもちゃんと返さないと」
レットはそれを見て、右手を頭に当てて言う。
「あんたは本当に変わり者だよ。そんな金はもらっちまえばいいのに」
呆れていうレットにノリは微笑んで返す。
「彼に……ソウに悪いことをしてほしくないんです」
そしてノリは2杯目の紅茶を頼んだ。
――ニューデリー近郊の新興ビジネス都市グルグラム。
IT企業を中心に高層ビルの建設が相次ぐ一方で、そのすぐ横にはスラム街が広がっている。
レットの店、ヘブン・オア・ラスベガスも。
ターフィーのナイトクラブ(高級売春宿)、セックス・プレゼントもここにある。
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