第6話 2対100

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しかし、ニューデリーへ向かう前にカトマンズで知った情報なので、本来の目的は師である西条紅雄(さいじょうべにお)の家族、つまりソウであり、そのことは一緒に来たラドにも言ってない。 女性と聞いたレットは恋人かどうか訊こうと思ったが、ノリの悲壮感が(ただよ)う表情を見て、訊くのをやめた。 レットは口角を上げて言う。 「しかしあれだな。インターネットやスマートフォンでいつでも繋がっているっていう時代に、そんなアナログな人探しをしている奴がいるなんてたまげたよ」 「変ですよね。時代遅れもいいとこだ」 苦笑いをするノリ。 「それに……」 ノリはそう言うと、ポケットから輪ゴムで止められた札束を出して続ける。 「これもちゃんと返さないと」 レットはそれを見て、右手を頭に当てて言う。 「あんたは本当に変わり者だよ。そんな金はもらっちまえばいいのに」 (あき)れていうレットにノリは微笑んで返す。 「彼に……ソウに悪いことをしてほしくないんです」 そしてノリは2杯目の紅茶を頼んだ。 ――ニューデリー近郊の新興ビジネス都市グルグラム。 IT企業を中心に高層ビルの建設が相次ぐ一方で、そのすぐ横にはスラム街が広がっている。 レットの店、ヘブン・オア・ラスベガスも。 ターフィーのナイトクラブ(高級売春宿)、セックス・プレゼントもここにある。     
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