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「そういえばあなたにはまだ話してなかったわね。……私ね。愛していた人がいたのよ」
それを聞いたゼラは黙ったままだが、クロエのいっている意味がよくわかっていない。
クロエは続ける。
「その人がニューデリーのスラム出身でね。よく私にこの街を変えたいって言っていたわ」
そういうクロエの表情は、どことなく恍惚さを含んでいた。
「だから私が変えるの。もうすぐ彼が戻ってくるから、綺麗になった街を見せて驚かせたいのよ」
「お前……いかれているな」
悲しそうにいうゼラ。
クロエは、ゼラが座っていたデスクのイスに座る。
そして足を大きく動かして組み、さらに恍惚の表情を浮かべて言う。
「あら? でもあなたも私と同じでしょう? 私たちは“死んだ人間を生き返そうとしている”のだから」
ゼラは何も言わない、何も返さない。
クロエは嬉しそうに続ける。
「大丈夫。問題はもうすぐクリアできるわ。もう少しなのよ。コピーじゃない本物を、魂を、吹き込めるための実験は」
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