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第21話 スラム街の雨 後編
クロエは、屈強なネパール人2人に何か薬を注射した。
その後、ネパール人たちは、異様に筋肉が膨らみ、血管が浮かび上がり、目が充血しだす。
着ている服が破け、そして喉の奥から獣のような唸り声を漏らした。
「ネパール人に、虎の細胞を混じり合わせてみた合成種よ」
クロエは髪をかき上げながら話し続ける。
「彼らは生物学的に言えば、キメラってところかしらね? まあ、自分以外の細胞情報を取り込んでいるというところだけだけど」
キメラとは、2種類以上の異なった胚を結合して作られる個体であり、頭はライオン、胴体はヤギ、尾はヘビという姿をした、ギリシャ神話の空想上の動物「キマイラ」から名付けられた。
山羊(goat)と羊(sheep)から作られた合成種ギープ(geep)や、多くの人がどこかで写真を見たことはあるだろう、人間の耳を背中にくっつけたマウスなどが有名である。
キメラは人工的に作る以外に生まれることはなく、交配能力もない。
また1つの生命の中に、別の種類の細胞がそれぞれ交じりあうことなく共存しているのが特徴だ。
ダビシェは2体のキメラを見て、煙草の煙を吐き出しながら苦笑いをしている。
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