第22話 ナスと王様

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第22話 ナスと王様

ソウは、ヤムナー川の西岸にあるデリー市街に来ていた。 何をするでもなく道端に座り込み、ただ周囲を眺めている。 身なりのいい姿をした者で活気が(あふ)れるデリー西区では、駅近くの中心部に負けないくらい(にぎ)わっていた。 ここの路上には物乞いはあまりいないが、代わりに大道芸人やミュージシャンがいた。 観光地が近いせいだろうか、大道芸人は(かご)に入ったコブラを笛を吹いて踊らし、ミュージシャンの二人組はシタール(弦楽器)とタブラ(打楽器)を使って、インドらしいサイケデリックな民謡を奏でている。 ソウは、胸元から煙草、クラッシック・メンソールを出して、火をつけて紫煙(しえん)を吐き出す。 あの夜――。 クロエ・グラッドストーンがスラム街で演説をした夜に、ダビシェは殺された。 その後、スラム街の住人たちはクロエを受け入れ、多く者、特に若者たちは皆、クロエがヤムナー川の側に建てたドゥルガネーシャ研究所へ働きに行った。 そして、ノリはラドと同じように姿を消した。 ニンジャはレットが預かっているが、ダビシェが死んでからは食事を取ろうとしなくなった。     
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