第23話 悪漢

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第23話 悪漢

スラム街の廃工場で男が1人、鉄の柱に(なわ)で縛られている。 その男の目の前には、上下ベージュ色の制服を着た男――。 警察官のラウルが立っていた。 廃工場内はカビと()びだらけで、もう何年も放置されていることがわかるほど老朽化(ろうきゅうか)していた。 鉄の柱に縛られている男は、猿ぐつわを噛まされていて、モゴモゴとうめくことしかできない。 ラウルが何発か殴ったらしく、男の顔面はあちこち赤黒く腫れあがっている。 ガムを噛みながらラウルは、縛られている男の(ほほ)をペチペチと叩いた。 「あのイギリス女が何をやっているか教えろよ」 縛られている男は、スラム街から最近クロエの建てたドゥルガネーシャ研究所へ働きに出ていた男だった。 ラウルはそういうと、男の猿ぐつわを外す。 「知らねぇよ!! 俺はただ仕事をやると言われて、研究所へ行っただけだ!!!」 男が()えた。 すでにボロボロの状態なのに(すご)んでる。 「タフガイ気取りかよ」 ラウムは舌打ちをしながら用意していたペットボトルの(ふた)を開けて、男の頭からかけていく。 その液体が何なのかが、男にはすぐに分かった。 それは灯油だった。     
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