第6話 2対100

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第6話 2対100

午前8時――。 宿から出たノリは、ヘブン・オア・ラスベガスに来ていた。 店でモーニング・ティーを飲む。 朝から熱い紅茶を飲んで目を覚ます。 モーニング・ティーは別名でベット・ティーともいう。 インドではどんな小さい宿でも、朝に必ずベット・ティーのサービスがあるが、ノリとラドが泊っているスラムの宿にはなかったようだ。 意外かもしれないが、インドの朝は紅茶で始まる。 それはきっとイギリス領だった影響だろう。 ……それにしても若く見えるな。 日本人はたしかに若く見えるもんだが、こいつは中学生って言っても通用するぞ。 レットは紅茶を出しながら、目の前の男がもう30歳近いということが信じられなかった。 「あんたいつまでここにいるんだ。もう目的は果たしたんだろ?」 ヘブン・オア・ラスベガスの店主であるレットがノリに訊いた。 「いや、実はもう1人いるんですよ、捜している人……。ニューデリーに来ているとは聞いたんですけどね」 ノリは少し悲しそうに話し出した。 その人物は21歳と若く、ノリがネパールいた時に住んでいた村の1人で、髪は短く、背が高く、手足の長いモデルのようなネパール人女性だと言う。     
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