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第8話 派閥主義
ダビシェの話を聞いたレットは慌てて弁解しだす。
「ちょっと待ってくれ!? それはありえねぇ! だってこいつも子供たちもこの日までずっと俺の店に来てたんだぜ!?」
レットの言葉を聞いても、ダビシェはただ黙って紫煙を吐き出している。
その横で犬のニンジャが気持ちよさそうに、ダビシェに寄りかかっていた。
それを見て、レットはそれ以上なにも言わなかった。
返事をしないダビシェを見て、無駄だと思ったからだ。
ノリも何も言わずに俯いて座っている。
「おい、前髪のあんちゃん」
ダビシェが薄ら笑いを浮かべて声をかける。
前髪のあんちゃんとはおそらく、ノリのことだ。
ダビシェの声に反応してか、ニンジャもノリの方を向く。
「スワーミー・ヴィヴェーカーナンダって知ってるか?」
訊かれたノリは顔を上げて「いえ……知りません」と返事をした。
スワーミー・ヴィヴェーカーナンダ――。
インドのヒンドゥー教の僧侶であり、哲学者。
ヨーガの指導者として、インドはもちろん西側諸国に影響を及ぼした人物である。
ダビシェは、ノリが知らないと言ったにも関わらずに続ける。
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