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第18話 あなたに会いたい
ソウは、バーレストラン『ヘブン・オア・ラスベガス』に戻って来ていた。
出入り口付近にある、動かない3台のスロットマシーンがソウを迎える。
店内には、店主であるレットしかおらず、客はいない。
ソウは、それとなく訪ねる。
「今日は誰も来てないのか?」
レットは、調理道具を磨きながらソウを見る。
午前中に何人かの客が来て、それ以降は来ていないと返した。
「へぇ~、じゃあノリは来てないないのか」
ソウがそういうと、レットが答える。
「なんか今日は、朝からデリー中心部へ行くって言っていたぞ」
ソウはそれを聞いて驚く。
ノリは、ヒンディー語はおろか、英語すらろくに喋れないからだ。
「ノリの奴、大丈夫か?」
「心配いらねぇだろ」
レットは、調理器具を磨き終わるとメモを出し、ソウに買い出しへ行くように頼んだ。
あまり仕事をしていないが、ソウは一応ヘブン・オア・ラスベガスの従業員なのだ。
「あぁ、わかった。それにしてもノリはなんで中心部に?」
ソウが訊くと、レットが少し口角を上げて言う。
「女だ女。やっこさんはな、インドへお前に会いに来ただけじゃねぇのさ」
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