第18話 あなたに会いたい

1/5
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/176ページ

第18話 あなたに会いたい

ソウは、バーレストラン『ヘブン・オア・ラスベガス』に戻って来ていた。 出入り口付近にある、動かない3台のスロットマシーンがソウを迎える。 店内には、店主であるレットしかおらず、客はいない。 ソウは、それとなく(たず)ねる。 「今日は誰も来てないのか?」 レットは、調理道具を(みが)きながらソウを見る。 午前中に何人かの客が来て、それ以降は来ていないと返した。 「へぇ~、じゃあノリは来てないないのか」 ソウがそういうと、レットが答える。 「なんか今日は、朝からデリー中心部へ行くって言っていたぞ」 ソウはそれを聞いて驚く。 ノリは、ヒンディー語はおろか、英語すらろくに喋れないからだ。 「ノリの奴、大丈夫か?」 「心配いらねぇだろ」 レットは、調理器具を磨き終わるとメモを出し、ソウに買い出しへ行くように頼んだ。 あまり仕事をしていないが、ソウは一応ヘブン・オア・ラスベガスの従業員なのだ。 「あぁ、わかった。それにしてもノリはなんで中心部に?」 ソウが訊くと、レットが少し口角を上げて言う。 「女だ女。やっこさんはな、インドへお前に会いに来ただけじゃねぇのさ」     
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!