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旅立ち
今日は卒業式、それとも、晴れてシャバに出るのだから出所式と言った方が相応しいか。壇上から鬼の所長兼、教官が声高に檄を飛ばした。
「諸君、これから君たちは世に生まれ出るわけだ。君達には、持ち点が100点ある。
この点数を使って好きな人生を買い取ってくれ。ただし、楽な人生を歩めば歩むほど
来世の持ち点は少なくなるぞ」
オレはこいつの毎度毎度の説教に辟易していた。
そんな横柄な態度を見破られたのか・・・。
「おい、そこのお前・・・」
「ぼっ、僕ですか」
「そうだ、そこのお前だ。お前はどうするつもりだ」
きっと、なーんにも考えていない輩(やから)に見えたのだろう。
よーし、ここは期待を裏切って度胸のいいとこを見せてやれ。
「じゃあ僕は持ち点を使わない。苦労人生を選択するわ」
オレは意気揚々と答えた。
「いいんだなそれで、苦しくて自殺しても失格だぞ。失格すれば持ち点はマイナス。今回以上の苦渋が待っているぞ」
「大丈夫さ・・・」
脅しに屈してなるものか、その時は勢いに任せて返事した。その後にどんな苦労が待ち受けているかも考えずに。
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