隣人

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久し振りに金縛りに遭遇した。 新しい引っ越し先での出来事だ。 周りには墓地だとか神社仏閣もなく、開けて明るい土地だったし、入居してから一年近く何事もなかったからこの部屋では遇わないと油断していたから付け入られたのか。 寝付き難かった日ではあったものの、その時には何ら異変も感じてなかった。金縛りに遭うとは言えども幽霊の類いにお目にかかった経験は皆無だし、大した霊感も自分には無いと思っている。 だから、自分の金縛りは脳の誤作動だと理解している。長年金縛りを体験してきて、図太さを会得していた自分の独断と偏見に満ちた見解だ。ビビりだと笑ってくれても構わん。 それでもその日は、あの独特な久し振りの嫌な感覚に目が覚めた訳だ。 ピシリと空間そのものが固体化して凍り付く様な感覚と、瞬時に空気が淀み、体感温度が一気に下がる感覚。 瞼を開けたいのに開かない。 金縛りだと気付いた時にはもう遅かった。 完全に動かない身体。 頻繁に遭っていた頃には、雰囲気でそれと察すれば素早く起きて照明を一旦点けて、トイレに行くか水を飲むなどしてから再び寝付けば掛かる事もなかったのに。
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