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「だって、当分待たされると思ってたから」
「ああ、ごめん。時間が欲しいと言ったからだよね」
「それで、そんなに早く答えが出たの?無理しなくていいんだよ。あなたが板挟みにあっているのはよくわかってるから。大事な人を裏切るようなもんだものね」
僕は彼女のカップを持つ指の動きや、唇を結んでえくぼを作る微笑み、考え込む時の首を傾げる仕草、それに涙目に泳がせる黒い瞳を無意識に観察していた。
そして何故か、昨夜決めていた発言とは逆の言葉を発してしまった。
「僕が母を説得するから、それまで待ってくれないか?時間が欲しいと言ったのはそういう意味だから」
『ハァ?』
その答えに未来の意識が僕の頭の中でパニックに陥っている。
その道に何が待っているかあれ程話して相談したというのに、この運命のターニングポイントで同じ道を歩むと言うのか?
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