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浴室の前の床に倒れた体を動かす事が出来ない。心も体も冷え切って、このまま意識が回復しないのではないか焦った。
時が失われて僕という存在が消えていく。
全てが過去に埋もれて消滅しそうな感覚に襲われた。
しかしその時、遠くから娘と妻の声が聞こえた。
それが光が射し込むように、暗雲に包まれた僕の心を呼び醒ました。
「やだ。お父さん」
「何?どうかした?」
「お母さん。早く、こっち来てー」
妻と娘は仰向けになって宙を駆けるような姿で倒れている僕を見つけて驚いていた。
二人とも一週間振りに自宅へ帰り、荷物を玄関に置いて父を呼んだが、一向に返事が無いので上がって来たのである。
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