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僕は痺れた指を震わせて少し体を起こし、歯医者で麻酔を打たれた時のように唇を引攣らせて微笑んだ。生き返ったような気分と、家族に逢えた喜びに幸せを感じた。
「お帰り……」
その囁き声に娘がしゃがみ込んで目の前で笑っている。
「ただいま。お父さん。なんでこんな所で寝てんの?」
「お風呂で、のぼせたみたいだ」
「えっ?でも冷たいよ」
娘は僕のおでこに手を当てて心配している。
「しょうがないわねー。救急車呼ぶ?」
妻は呆れて僕を見下ろしていたが、怒っている感じではない。心配性で脳出血でも起こしてないかと思ったのだろう。
「いや、ここにいるよ……」
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