Life 1. 正しい道

3/6
前へ
/26ページ
次へ
『えっ?』  それは一瞬の出来事で、僕は僕の頭の中にいて母の姿を見て、驚いた様子もなく母との別れを惜しんでいる。 「過去の僕」は、「未来の僕」の意識が此処(ココ)に居ることを知らないのか?  それは僕の記憶にも鮮明に残っている忘れられない光景であった。 「また、遊びに来るよ」 「わたし、死ぬんだよね。ガンなんでしょ?」 「いや、そんなこと言わないで」  僕は困惑して、なんて言ったらいいのか分からず言葉を濁し、娘と一緒に母に手を振って車に乗り込んだ。  母が病気になり、娘と一緒に横浜から新潟の田舎に車で帰省した。病名はすい臓がんで余命告知されていたが、まだこの時は痛みがあるだけで元気に振る舞い、兄からは本人には病名は伝えてないので、普段通りに接してくれと言われていた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加