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『えっ?』
それは一瞬の出来事で、僕は僕の頭の中にいて母の姿を見て、驚いた様子もなく母との別れを惜しんでいる。
「過去の僕」は、「未来の僕」の意識が此処に居ることを知らないのか?
それは僕の記憶にも鮮明に残っている忘れられない光景であった。
「また、遊びに来るよ」
「わたし、死ぬんだよね。ガンなんでしょ?」
「いや、そんなこと言わないで」
僕は困惑して、なんて言ったらいいのか分からず言葉を濁し、娘と一緒に母に手を振って車に乗り込んだ。
母が病気になり、娘と一緒に横浜から新潟の田舎に車で帰省した。病名はすい臓がんで余命告知されていたが、まだこの時は痛みがあるだけで元気に振る舞い、兄からは本人には病名は伝えてないので、普段通りに接してくれと言われていた。
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