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それから僕の意識は数回ジャンプした。
母の病状が悪化していくシーンへ移動して、フラッシュバックのように実体験し、幾つかのシーンごとに、僕は「過去の僕」にアドバイスしたが、伝わる事なく失敗を繰り返してしまう。
このもどかしさは何なんだよ。
僕の意識は僕の頭の中にいて、体だって僕の物なのに何も変えられない。
過去はあの時の過ちを1ミリの誤差も許さずに再現して行く。
すい臓がんの進行は予想以上に早くて、休暇を取って田舎へ帰る度に母の死が目の前に迫っているのを感じさせた。
母はもう痛み止めを飲まないと、食事を作るのも辛そうだった。
『なんか料理を作って、食べさせてやりなよ』
『母への手紙。何で手書きにしなかったんだ?母がパソコンの文字嫌いなの知ってるだろ』
『母はプライド高いんだよ。手を添えなくても、ひとりで歩けるさ』
『だから、もう遅い。モルヒネで母の頭はおかしくなってるぞ』
『もう、死にたいとしか言わなくなる』
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