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何度か試していると、そのルーティンが完成された。午後の時間を楽しむように、ひとりでゆっくりとお風呂に肩まで浸かって100まで数える。
その時、一番大事なのは母を思い浮かべて、その笑い声をしっかりと聞く事だ。
つまりこの意識のタイムスリップは母に関連した出来事でなければジャンプできない。
そして少しだけ意識が飛ぶのを遅らせて、宙に浮かんで体をコントロールしてやる。
夢遊病者のように風呂場から出て着替えるのを見守るのに成功した。床に倒れて気絶してしまうのは同じだが、湯冷めするのを考えれば格段の進歩である。
そして問題は過去の僕に意見をどう伝えるかだ。
それにはある方法を発見した。
「瞳の中に僕を映し出す」のである。
頭の中に入ったら、脳液の海を泳いで、視神経から網膜に侵入して間近で母の姿を視る。
すると母は不思議そうに僕の顔を見て、「あなたの中に誰かいない?」と思う筈だ。
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