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「あなたにとってはお墓参りは葬送であり、プロポーズでもあるとお聞きしたので、在ってもよいかと思いまして。外国の葬儀ではよく使われるものですから、葬礼と挙式を兼ねてみました。よかったらもらってください」
「でも、お値段が……っ」
「いえ、ど素人の作品ですから、お気になさらずに。ああ、むしろあまり見ないでください、粗がばれます」
手に取ろうとしたので、慌てて取り上げました。ふわりと薄紙で包んで、スーツと一緒に箱に入れます。
それを更に手提げに入れ、車椅子の手押しハンドルに掛けました。
「ありがとうございます」
帽子の礼でしょうか、廣瀬様は恥ずかしそうにおっしゃいます。
「いいえ、こちらこそ。よいお仕事をさせていただきました」
ドアへ向かうので、先んじて行き、ドアを開けます。
「ありがとうございます」
再度礼を述べて、頭を下げながらドアを抜けます。
「いいえ、プロポーズが成功することを祈っています」
廣瀬様が顔を上げ、目を合わせてくれました。とても晴れやかな笑顔を見せてくれます。
「きっと大丈夫よ」
「そうでしたね」
元より、彼からのプロポーズを何度も受けていたのです。
「それと、約束を忘れないでくださいね」
私が言うと、
「はい」
とても明るい、元気な返事が返ってきました。
その笑顔で、あなたが新しい一歩を踏み出したと判ります。
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