五話 縋る子5

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五話 縋る子5

「そうですね……一つ例を話ま しょうか。 薄い食塩水と濃い食塩水を 混ぜるとどうなりますか?」 「均等に混ざって同じ濃さになると 思います。」 「そうです。濃い方は薄い方を、 薄い方は濃い方を互いに同じ 濃さにしようとするんです。 まあつまりそういう事です。 成り得る物、この世に生きる人を 濃い食塩水だと例えると、 成り得ない物は亡くなった人、 薄い食塩水です。 これらはそれぞれ現世と霊界で 存在できますが、霊が現世に いるとそれはとても不安定な状態 になるんです。けれどそれが現世の 人に触れることによって互いに 混ざり合い、均等の濃さになって 安定します。ですが、逆に言うと 現世の人はこの世で生きるための 生命力というものが奪われ、薄くなり 不安定な状態になります。」 「それって……つまり……。」 危険な存在では無い、そう告げたその 霊を彼女は怖れに満ちた目で見る。 「そう。真美さん、貴方は今 その霊にこの世で存在できる 生命力を奪われているんです。」 「……このまま放って置いたら私、 死んでいたんですか?」 「我々霊媒師は死ぬという事は 生命線というあるボーダーラインより 下回ったときだとしています。 生命線より上は現世、下は霊界。 生命線に近づけば近づくほど霊という 存在を認識することができるように なります。だから貴方は今その子を 視界に捉える事ができるのです。 このままの状態が続けば生命線を 下回り死ぬ可能性もあるでしょう。 たとえその霊にそんな意志は無くて も、触れ合っている以上あなたの生命 力は薄くなっていきます。 だから、除霊をしないと 危険なのです。 ご理解頂けましたか?」 「……はい。」 彼女は自分の置かれていた危険な状況 を把握しても冷静なままだった。 それは話が常識を超えていたという こともあったのだろう。 たとえそれらが見えたとしても、 生まれてからずっとこれと付き合って 来た者と、つい最近知った者とでは やはり理解度には差がある。 きっと信じきる事ができないのだろう。 しかし、それは仕方がないことだ。 全てを信じるなんてできるはずも無い。  でも、半信半疑でも人はそれらと 付き合っていかなければならない。 ならば、それらを信じている者が 手を貸してやればいい。 疎外的な目を向け続けられても、 霊という存在を霊界に送ってやれる のは俺達霊媒師しかいないのだから……。 「それでは真美さん。除霊を始めま す。」
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