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家族旅行で海、なんて行ったことがない。
というより、水辺に近づくような所はなかった、気がする。
「僕、魚じゃないわ……水の中、苦しいし、」
水の中に居場所はない。
そんなことを考えながら視線を動かしていると、自販機を見つけた。
ポケットから財布を取り出し、小銭をあさる。
「……130円は流石にあるか」
小銭を自販機に入れ、飲みなれた炭酸飲料のボタンを押した。
(炭酸飲めば少しはスッキリするかな)
ガコンッ
落ちてきた缶を取り出す。
「はっ……?」
炭酸飲料を押したはずなのに、出てきたのは、よく知らないメーカーのいちごオレ。
「まーじーかー」
この暑い中、いちごオレはない。
世間的には知らないが、僕的にはない。
けれど、自販機の管理者に連絡するのも、新しく買い直す金もないので、僕はしょうがなく、缶のプルタブを開け、いちごオレを飲む。
ゴクゴクと喉を鳴らして一気に飲み乾す。
「……あっま」
別にいちごオレが嫌いだとかそういう訳では無いけれど、炎天下の中でこの、口に残る甘さと喉に張り付いたような牛乳の感じはきつい。
でも、まあ、水分はとったし。
なんとなく、これ以上何かを飲む気にもなれない。飲む金もないけど。
自販機横のゴミ箱に空き缶を入れ、さて、どこに行こうかと悩む。
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