検索、【僕の居場所】

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「……あれ?」 急に柵が目の前から消えた。支えを無くした手はガクリと脱力し、それが体にも伝わる。 体がビルの外に投げ出された。 浮遊感。 (あ、老朽化か) 頭は冷静に動いている。錆びていたから僕のかけた重さに耐えられなかったのか。 空が、見える。 回旋するように鳥が飛んでいる。 (僕、お前の所には行けないみたいだ) 僕に羽はないし、何より重力が僕を地面へと引き戻すんだ。 空からどんどん離れていく。 (空なら、僕は誰にも笑われず……居られそうだったのに……) 地面に立っていても、水の中にいても僕は誰かの笑いものだった。それから逃げたかった。 正確には、逃げた。 逃げて、家に篭もったら、今度は両親が腫れ物を扱うように接してくる。 苦痛だった。 そんな生活の中で、ふと、ここが居場所じゃないと思って唐突に行動に出てみた。 母さんは外に出た息子にさぞ安堵した事だろう。 母さんの笑った顔が脳裏を過った。 でも、そこへは帰れそうもない。 (ごめん、母さん) グシャリ 「……カハッ」 骨の折れる音がした。肺に骨でも刺さったのかヒューヒューと変な息が漏れる。 お腹のあたりが熱い。一緒に柵も、落ちたはずだから破片が刺さったのか。 足は感覚がないけれど、変な方向に曲がっていて、完璧に折れてるのが素人目にも分かった。 ていうか、意識が落ちないとか……高さが足りなかった?じわじわと体が痛くなってくる。 呼吸も苦しい。 ポケットに携帯を入れてきたが落下の衝撃で壊れているだろう。仮に動いたとしても腕が動かない。 とにかく、僕の体は悲惨なことになっているだろう。 酸素が回っていないのか、視界が狭まってきている気がする。ヒューヒューと息をしながら、必死になって体を仰向けにする。 「……は、は綺麗、だな、ぁ」 真っ青な空。 出来れば、そこで生きたかった。 (パイロットにでも、なればよかったかな) なんて、思ってももう遅い。 目頭が熱い。 ひとしずく、つーっと頬を伝った感覚を最後に僕の意識は途絶えた。
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