4人が本棚に入れています
本棚に追加
検索、【僕の居場所】
ある時ふと、僕の居場所はここではないと思った。
別に、何かあったわけじゃない。
ゲームをしていたら、本当に唐突に、コンビニに行こう位の感覚で、そう思った。
とりあえず、区切りのいいところまで進めて、セーブして、ゲームの電源を切った。
外に出てみようと思う。
カーテンの隙間から外を見ると空は快晴。太陽が照りつけていた。
「あっつそう……」
これなら、着込むことはないと、Tシャツにパーカーを羽織る。
(別に誰かと会う訳でもないし、スボンはジャージのままでいっか)
パーカーのフードを目深に被り、ズボンのポケットに財布と携帯を突っ込んで部屋を出た。
ミィーと足元に飼い猫のコダマが擦り寄ってきた。
飼い始めた時は凄く小さくて小さいタマでコダマなんて名付けたけれど、6年経った今は随分大きくなった。横にだけど。
コダマじゃなくて、これは、もうオオダマねといつか、姉さんが笑っていたのを思い出す。
あながち間違いじゃないなぁ。
手にすり寄ってくるコダマを「お前も大きくなったね」食べ過ぎるなよ、と頭を撫でた。
玄関で靴を履いていると、物音が聞こえたらしい母が後ろから来て、少し驚いた顔で「出かけるの?」と聞いてきた。
僕はそんな母の顔を見ながら「ちょっと捜し物してくる」と返す。
きっと僕の捜し物がなんの事かなんて見当もつかないだろう母は、「いってらっしゃい」とにこりと笑う。
母の顔をしっかり見たのは久しぶりかもしれない。
「いってきます」
まあ、そんな感じで家を出てみたものの、どこが僕の居場所かなんて、思い当たるような所もない。
太陽が眩しい。
玄関を出て、ドアを閉めて数歩。
早くも、挫けそうだ。
でも。
ここではない、そんな気がする。
……何となく。
最初のコメントを投稿しよう!