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「あのバカ猫は、今は王国西の荒野にいるのよね。お宅の怖そうな執事さんと一緒に」
「あっ、そうでした。ルドーさんは義父の用事の代行で、西の荒野へ出かけています。古代の石柱遺跡と泥炭しかない寂しい土地のようですが、そこにも子爵邸の荘園があるのです」
「へえー。子爵家の荘園って、いたるところにあるのね」
「泥炭は、燃料とか園芸材料に加工して販売できるので。当家の重要な収入源です」
マイケルは目を細めると、ピンクの肉球をこすり合わせた。商家出身の彼は、金勘定も得意分野のようだ。
「ルドーさんは家令の役目も担っているので、荘園内の経営も管理しているのです。そういうわけで、新しい荘園差配の任命手続きに出張されているのですよ。差配とは、荘園内の治安管理とか運営を任されている猫ですが、前任の差配さんが体調不良なので、役目を息子さんに譲られるそうなのです。その任命手続きに、ジョッセル様がどうして同行されているのか、僕は理由を聞き及んでいませんが」
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