17人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
ジェレミーは眉宇を引き締めた。
目前には荒涼たる荒野が広がっており、いじけた形で生い茂るヘザーが黒いしみのように草原にこびり付いている。
風に舞う雨粒を避けて目を凝らすと、そびえ立つ石柱群の陰にチラリと数名の影が見えた。そしてさらに観察を続けると、石柱群から少し離れた場所に黒塗りの馬車が止められているのを発見した。
馬の速度を落としつつ近づいてみると、一団は男猫ばかりでなく女猫もいるようだった。ジェレミーは少し回り道をすると、いったん丘の頂点へ愛馬を登らせ、緩やかな坂をゆっくりと下りながら遺跡へと近づいた。
黒衣の女猫は、円陣を組むように並んだ石柱群の中に、たった一匹で立っていた。
黒い毛皮の帽子を被り、艶のある黒い毛皮のコートを羽織っている。毛皮のコートは雨粒を弾くようだが、それでもこのような天気の日に着るには贅沢過ぎる。
きっと女猫は、コートの一着や二着など着潰しても惜しくないような金持ちの夫人か、でなければ外国からの観光客なのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!