2 激しい雨風の中、若い差配は荒野に倒れる

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「これは申し訳ありませんでした。私が何者か警戒していらっしゃるのですね。ご安心をしてください。私の名はジェレミー・ディスフォード。このランカスター子爵様の荘園で、差配人である父の代理をしている者です」  ジェレミーは愛馬から降りると、黒衣の女猫に歩み寄ろうとした。すると石柱群の外側にいた男猫たちが、血相を変えて駆け寄って来た。彼らは、突然現れた若い役人に強い警戒心を抱いている。 「観光ですわ。お若い差配様」  黒衣の女猫は片方の口角だけを吊り上げると、ゆったりとした調子で返事をした。青灰色の毛並みをした猫で、くっきりとした品のある顔立ちをしている。  女は片手を持ち上げると、今にも飛び掛からんばかりになっている男猫たちを下がらせた。 「遺跡の観光ですか。それにしては、ひどい日を選んだものですね。助言ですが、一刻も早く宿へ戻られた方がいい。雨も今より強くなりそうだし、夜には季節外れの嵐になりますよ」 「ええ。実はそのつもりでしたの。まだ遠い様子ですが、雷鳴が聞こえましたものね」 「賢明なご判断です。では早く」
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