1 美少女は、貧乏画家を間抜け呼ばわりする
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1 美少女は、貧乏画家を間抜け呼ばわりする

 ダーオ・ブッチーニは苦虫を噛み潰したような表情で、カフェの窓越しに店内の様子を睨みつけていた。カウンター内には、先月から店にやって来た縞模様の中年猫がいて、忙しそうに客の応対をしている。 「店主の一身上の都合により、営業譲渡いたしました。って何よ! カトーは、いったいどこへ行っちゃったの?」 「心配ですよね。もう、あのランチは食べられないのかなぁ」  ダーオの隣でマイケル・ランカスターが呟いた。正式に子爵家の跡継ぎとなり、一段とふっくらとした体つきになった彼も、不安そうに店の奥を見つめている。 「カトーのランチが食べられない……。ああ、そんな不吉なことを言わないで。彼のランチが食べられなくなったら、あたしは生きていけないのよ。三日も持たずに死んじゃうわ」  ダーオ・ブッチーニの嘆きを聞いて、マイケルは小首をかしげた。 「でもねえダーオ。カトーがいなくなってから、もう一カ月以上経っているけど」  不用意な発言の返答は、美しいアーモンド型をした瞳の射るような視線だった。オレンジ色の縞模様をした少年猫は、慌てて話題を切り替えた。
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