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2 激しい雨風の中、若い差配は荒野に倒れる
冷たい雨粒を含んだ風はうなりを上げて、ジェレミー・ディスフォードに吹きつけてきた。
彼は青年期半ばの活気あふれる猫だったが、この強風では馬の背にかじりついて、油をしみこませた帽子や防水マントを飛ばされないようにするのがやっとだ。
吹き荒れる風はジェレミーの茶色い毛を濡らし、まるで若い差配の行く手を阻もうと意志を持っているかのように感じられる。
空の色が黒い。遠くで雷鳴が聞こえ始めたからか、愛馬も鼻息を震わせて怯えている。
しかし黒い馬車に乗った見慣れない一団が、古代の石柱遺跡付近に向かったという情報を聞いたからには捨て置くわけにはいかなかった。
なぜなら、つい最近その遺跡の中で、若い女猫の惨殺死体が発見されたからだ。
ジェレミーは馬の腹を踵で蹴ると、丘の上にそびえ立つ遺跡を目指した。
「彼らが、そうかもしれない」
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