6月

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僕は、気になって僕の肩の上で眠りこける女性に視線を向ける。 僕の視線からは彼女の頭頂部しか見えなかったが、同じくらいの世代であろう事はわかった。 そのせいか、その人から甘い匂いがしてくる気がした。 その匂いと蒸し暑さが入り交じり、僕の本能を刺激する。 いっそのこと、行き先なんか放棄して、頬の染まった彼女の横顔を肩に乗せたまま、いつまでも乗っていたい… いや待て、そんな思考はこの蒸し暑さのせいなのかも… きっと、自分も湯立つような顔色で、それが暑さのせいか、それとも隣の人のせいなのか、脳ミソがわからなくなってるんだ。 ……と、蒸し暑さで消え入りそうな意識と、反対に沸騰してゆく欲望とが曖昧に入り乱れる時間が不意に終わりを告げる。 彼女がゆっくり顔を上げた。 眠そうに目を開けながら。
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