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6月
今年の6月は、雨季が爆発したように蒸し暑かった。
梅雨らしい雨なんか一向に降らないくせに、湿度だけは一丁前で、この日差しと相まって僕らを蒸し焼きにする。
僕がいつも降りる駅は、郊外と言うにはあまりに都市部から遠く、沿岸部に位置する町は過去に観光地として賑わったものの、今では寂れている。
寂れた町のくせして、いつも乗るローカル線はいつでも混雑していて、ただ、ちょうどその時は、僕の目の前の席が空き、おしくら饅頭のように周りから押し込められ上手く席に座れた。
…今日は上手く座れた、と思ったら、隣の女性が頬を僕の肩に乗せてくる。
いや、何の事はない。ただの居眠りだ。
時々あるいつも通りの光景。
なんの問題もない。
それよりも、この蒸し暑さときたら僕らの事情なんてお構いなしに蒸し焼きにしてくる。
エコなのか何なのか、電車のエアコンは最低で、肩越しに伝わる隣の女性の頬は、蒸してアツアツの状態だ。
なんだか、湯気立って赤く染まった女の横顔を想像し、そのまま大人の男女を彷彿させるようなシチュエーションを妄想してしまう。
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