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……
「おーっ、ヒロ! 」
今日は谷村と約束した合コンだ。
仕事を終えて一旦家に帰った僕は、谷村に言われたように髪型を整えようとした。
上手く出来ずに何回もやり直しして時間が掛かったせいか、谷村との待ち合わせ場所に行くと、すでに谷村が待っていた。
結局、昨日は秋山実里から残業を言い渡されて、彼女のいる散髪屋には行けなかった。
…土曜日、
明日の土曜日には、タッパーを返しに行かなくちゃ。
「髪型、上手くできてるじゃんか!」
谷村が満足そうに笑みを浮かべている。
…まあ、だいぶ時間は掛かったんだけど。
待ち合わせ場所に行くと、佐々木が待っていた。
…女の子達はいない…。
「おお!ヒロ!男前じゃん!」
佐々木は面白そうに僕の髪型を観察している。
「佐々木、早く行こうぜ」
谷村がそう言うと、佐々木が "わかった" といって、僕達は繁華街を目指す。
「やっほ、ヒロくん」
店に入ると中村愛結がいた。
「え? あれ、今日は?」
「え?聞いてないの?」
中村愛結は一瞬驚いた顔をしたが、すぐさま笑顔に戻る。
「じゃあ、ヒロくんはあたしの隣ね」
「それ、つまんねーだろ、ヒロはこっち」
谷村がそう言いながら席につく。
「なにそれ、つまんないとか、あるの?」
中村愛結はテンション高めの口調で上機嫌に見えた。
上機嫌の表情で、中村愛結は僕を見る。
その瞳が、僕を探す。
僕は知っている。
僕を探す、その眼差しを………。
でも、それをどうしていいのか
僕には…
僕には、わからなかった。
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