キャンバス

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夜も更けてゆき、宴は幕引きを迎える。 いつも以上に酔った僕を、佐々木と上原香織が、家の近くまで送ると言い出した。 そこまでは酔っていない気もしたが、僕らは三人で繁華街の中を歩いた。 「そういや、この前のアレ、どうなった?」 佐々木がニヤニヤしながら聞いてきた。 「あれって?」 上原香織が、聞いてくる。 「ああ、なんだっけ?」 やはり、僕は酔っているのか? 「ほら、水曜日くらい? 電話で話したヤツ、玉砕したのかよ」 佐々木が笑っている。 「えー、何々?」 上原香織が興味深々に聞いてくる。 酔った僕は、"僕の話なんかどうでもいいのに"って思ってる。 「コイツさ、女にコクったって」 「わあ、やるじゃん!」 佐々木と上原香織が僕の話で盛り上がる。 「いや、コクってない、また行くって言ったから、行ったんだ」 僕は酔っている。 「で、行って…どうなったんだよ」 佐々木は笑っている。 上原香織は興味深々。 僕は酔っている。 「さくらんぼ…貰った。」 佐々木が僕を見て目を見開く。 「マジか!」 「良かったじゃん、ヒロくん!」 上原香織もテンションを上げる。 どうして人って、こうも他人の色恋沙汰に興味を(いだ)くのか… …色恋沙汰だって? 僕は今、 散髪屋の彼女の事を…そう思ったのか? そうか… 僕は… 彼女が好きなんだ…
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