SOUL FRIEND#41の後

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キッチンの、締めの甘い蛇口から落ちる水滴の音。 その小さな音が、 一定のリズムを刻んで 部屋の中に広がってゆき よけいに部屋の静けさを 際立たせた。 アトリエの闇の中にぼうっと浮かびあがる、 アンティークテーブルの上の 一輪の白いバラ。 「 知ってたんだね   オウジの事・・。 」 カイがそのバラに、 バラの向こうにいる“彼女”に 向かって ぽつりと呟いた。 「昔っからそうだよなぁ・・  ぬいぐるみでもケーキでも、いつも同じモノを気に入って 取り合ってたもんな・・?」 二卵性の、異性の双子でありながら まるで魂が2つに分かれたようだと 言われるほどに似ていた カイとヒナ。 与えられた宿命の中で競い、別れ、 愛も憎しみも 分かち合った2人。 「ふふっ・・   オウジをここに連れてきたの、ヒナだろ・・? 思えばあの夜、 オウジはヒナの前で 歌ってたんだもんなぁ」 閉じたまぶたに浮かんでくる、いたずらな微笑みの妹。 初めて逢ったオウジに  根拠のない懐かしさを 覚えさせ 運命的な絆を紡いだ、 彼と同じ目をした妹。 「ボク等を逢せて どうするつもりだったのさ・・・?」 胸の中に押し込められ 疼いていた感情が  言葉という形になることで 明瞭さを取りもどし 次々とカイの前に現れる。 そしてそれは言葉にすればする程、胸の奥をかき回し いろんな思いを浮上させた。 「・・・死んでもいいほど、 オウジの事が好きだったって言うのか!?」 ふいに突き上げてきた感情をそのままに カイは起き上がり、 誰もないアトリエに叫んだ。 「ボクや母さんや 父さんよりも?!  ボク等にもう逢えなくなってまで  オウジを守りたかったの?!!」 カイの知らない  黒い服と闇に包まれた 少年たち世界。 自分の知らないヒナを オウジが知っている。 自分の知らないオウジを ヒナが知っている。 ヒナはどんな風に 彼等と過ごし  どんな顔をしてオウジを想っていたのだろう。 手の届かない悲しみ。 何に向かって嫉妬しているのかわからない たとえようのない胸の焦燥。 カイの目から次々と やりきれない涙が あふれ出した。
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