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もうずっと閉じたままの君の瞳はどんな世界を映しているの? 俺が眼を閉じると見えるのはただの真っ暗な世界だけ。もしずっとそういう世界を見ているのだとしたら……やんちゃで活発な君にはとても退屈じゃないかな。
96、97、98、99……あ……!
「ねえ、見て……ヒナタ、三つ編みの編み目、100、超えたよ」
足下にも届きそうなほどに長い髪。
ヒナタ、すごくびっくりするんじゃないかな。
だっていつの間にか自分の髪が、君が望んだように綺麗に伸びてるんだから。
結って彼の顔に向かって笑いかける。
「見てよ、こんなに長い……」
彼の瞳は伏せられたままで開かない。
「ヒナタ、立って見せてよ、俺に……くる、って、いつもみたいに、回ってみせて」
もうあの時みたいに、親に髪を切られたって泣かなくていいんだよ。
笑って俺に見せてくれよ。
急に眼の奥がちかちか痛んだ。ハレーションみたいに。
今まで一度だって流したことのなかった粒が、眼の端からぼたぼた溢れていく。俺は思わず君に抱き着いて泣きじゃくる。
泣いたってなにも変わらないって、何百回も何千回も何万回も思っていたのに。
「ヒナタ……起きてよ、見てよ……100超えたよ……3つだけだった編み目が……ねえヒナタ……」
あれから何度も頭を過った映像が脳裏に浮かぶ。
毎朝食べてくる蜂蜜とバターたっぷりの食パンを、今日は寝坊して食べられなかったんだ、って悲しそうに笑ってせかせかと歩くヒナタの姿が……一瞬で吹っ飛んでいく。
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