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青い空に彼の少し大きな黒いランドセルが綺麗に映えた、夏の日差しの向こうで、君がコンクリートに投げ出されて転がる。
紅い血潮が熱くて無機質なアスファルトにじわじわ滲んで、君は事切れたように動かなくなる。俺はそれを見ていることしかできない。
膝が笑って、崩れ落ちた。夏の青い空を見ると、今でもあの時の無力感が甦る。
……なんで俺じゃなかったんだろう……!
「ヒナタ……いい加減、起きてよ……寝坊しすぎだよ……!」
身じろぎを感じた。俺は涙を止めて眼を見開く。
長い睫毛が揺れた。
君の目蓋が上がるのを、夢見心地で見ていたんだ。
夢、なのかな。
「……ヒビキ……?」
声、変わってない。だけどすごく掠れてた。
ヒナタ、って呟いたら、君がふ、と顔を歪めて笑う。
「ヒビキ、どこに、いたの? 100、がなんか、とか……ずっと探してたんだけど……寂しかったん、だから……あれ、なんか、変わった……?」
俺はぼたぼた出てくる涙を殺して話す彼を目の前で見ていた。鼻水が出て啜る。
寂しかったのは俺の方だよ、バカ。
もしかして、君は100になるのを待ってたの?
そうだとしたら、すごく我が儘なんだけど。
「……なんで、泣いてる……? ここどこ……?」
メロディーのように溢れ出る思いを言葉にできない。
腕で眼をごしごし擦りながら、君を慎重に、ただ慎重に抱き起こす。
「……か、み……ッ」
一番最初に出た言葉は、これだった。
俺が指差す先を見る。
彼の笑顔を、俺はずっと待っていた。
終
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