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ナイフは直線の軌道で放たれ、そのまま深々と突き刺さっていた。
「……主人を護った、のでしょうか?」
俺の隣でセンパイが呟く。つまるところ……
「ヴ、ヴゥ………」
投擲されたナイフが深く刺さっていたのは、悪魔の子供を抱き抱えた無明の背中だった。
「獣にしては速かった……いや、そうか
生存本能が貴様にそうさせた、か」
確かに、無明の動きが後少しでも遅れていれば今頃ナイフは標的を貫いていたに違いない。
それをまるで、自分を守るかのような反射速度で反応し他人を庇うとは
これにはウーリも関心したようで、興味深いものを見たように口調にやや好奇心が混じっている。
「って、見てる場合じゃないか。なんであろうと悪魔は──」
『・・・let’s』
センパイから受け取っていたディスクを装填しながら戦いに参戦するべく地を蹴り駆け出す。
「変身」
『play back music』
光の柱と装甲に包まれながら跳躍した俺はウーリと並び立つように着地しながら無明を睨む。
「──誰だ?」
だが、突然の来訪者等誰も歓迎はしない。ウーリは片手のナイフをクルリと逆手持ちにして俺の首元にあてがった。
「俺は……天使エルゥの協力者だ」
「エルゥ、我が不肖の弟子の協力者……?」
ウーリは俺の正体にまだ疑いの様子が見られたが、俺が走ってきた方向に視線を向けるとセンパイもまた此方に走ってきていた。
「ウーリのおじ様。その人の言ってるこのに嘘偽りはありません」
「エルゥ……こほん。人前ではウリエルと呼べと言ってるだろう?」
センパイの姿を確認した所でウーリ……いや、ウリエルは警戒を解きナイフを降ろした
「し、失礼しました、ウリエル様。それで私達もお手伝いをしに……あ」
「おや。……上手く隙をつかれてしまったな」
センパイとウリエルが先程まで無明のいた地点を見ると、既に奴はその場から消えていた
「な……おいセンパイ、さっさと追いかけるぞ」
「焦りは不要だ。
奴の背に刺した刃、あれは眠りを誘発するよう呪いを施してある
お陰で一時的に暴走も沈静化、逃げても3時間は暴れられないだろうよ」
ウリエルは追おうとする俺の肩を掴んで首を横に振り制止する。
「……そうやって放っておいて被害が出てからじゃ遅い、俺はそう思うが?」
「確かにな。だが、君達と合流した以上私にも聴いておかねばならない事があるのだ」
センパイを見ると、此処は従いましょうとばかりに頷くので仕方なくではあるが俺は変身を解いた。
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