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side─?
「確かに、土蜘蛛が潜んでいてもおかしくない環境だ」
エルゥらと別れた後、老天使ウリエルはエクシアが確認、討伐されたと言う廃墟を訪れて周囲に流れる淀んだ空気を感じとりながらナイフを地面に突き刺す。
「陰の気が溜まりやすい土地は必ず存在し、私達天使の管轄とはちと違うが……」
と、少し移動した所に更に一本のナイフを突き刺す。
これで5本。そのナイフは地面に光の線を伸ばして繋がりあい、五芒星の紋章を描いた。
「………さて」
昔学んだ陰陽術とやらを組み込んだ術式で土地の浄化を行おうとしたウリエルだったが、その胸中は穏やかではなかった。
(……本当に土蜘蛛だけか?)
土蜘蛛とエクシアが結び付いたのはほぼ間違いないだろう。
だが、それがイコール彼女が堕天した理由と言える訳ではない。
土蜘蛛に追い詰められたエクシアが土蜘蛛を巻き込んで堕天したか
「何かに堕天させられかけたエクシアの側に土蜘蛛がいたのか」
前者も後者も結果は同じだが、後者なら……あと一人、あるいは一つの要素が存在することになる。
考え過ぎかとも思うが……
「二つのディスクプレイヤーが出現したのだ。偶然とは思えんがな……」
光が収まり土地の浄化が終わる。
これで再び陰の気が蓄積するまで暫くはこの土地に怪異が現れる事はない筈だ。
「……エクシアよ、せめて安らかに眠れ」
散った同胞への祈りを込めながら地面に刺さったナイフを回収していく
──ズズ……
最後の一本を引き抜いた瞬間、ウリエルは何かが這い回るような不気味な音を捉えた。
「む……?」
両手にナイフを構えて臨戦態勢に移行する。
浄化された直後に感じた気配。
いかなる悪霊、悪魔、堕天使とて浄化した瞬間にこそ消滅、逃亡、反撃等何かしらの行動起こすべきだろうに……
「何者だ……姿を現せ」
言葉は返ってこない。
それどころか、周囲に感覚を張り巡らせても僅かな魔に類いする気配すら感じない。
───ズ、ジュルル……!!!!
「──な、に……?」
再びウリエルが蠢く音を聞いた時、ウリエルはその音の主を漸く捉えた。
「成る程、……エクシア、これがお前を堕天させたのだな……?」
ウリエルは両手に構えたナイフをなんと自分の胸に刺しながらエクシアの堕天化の仕組みを解明した。
解明したが、僅かに遅かった。ウリエルは自分の中に侵入した「何か」を理解せぬまま、危険と判断し自分ごと葬ろうと迷いなく刃を深く突き立ててゆく
「カハッ……っ……此処で止めねばなるまい
でなければ、更に混乱を……!」
血が流れる度に翼から次々と羽が抜け落ちて行く。
「……ぐ……ここまでとは、すまん……エル……ル……」
老兵ウリエルはやがて全ての羽が抜け落ちると力が抜けたように膝から崩れ落ち地面に倒れた。
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