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「よくわかりませんけど、よくわからない姿になっても俺達の前に現れたのは……」
「無論。殺す為だ。
あぁ……思考が反転しても尚、か……」
頭を抱える堕天使、明らかに様子がおかしいが……彼を心配する程の余裕が自分にはない。
腰に巻かれたままのベルトと、片腕に握られていたクロエさんのディスクを交互に見る。
「……よせ、私にソレを見せるな。
これ以上……私の頭を書き換えるなっ!!」
余裕がないのは、皆同じらしい。彼は悲鳴を上げながらも、一歩ずつ此方に歩み続ける。
「ウリエルさん貴方の説教、まるで先生みたいで……意外と悪くなかったです」
事情は知らないけど、このまま辿り着けばクロエさんに危害が及ぶのは間違いない。
彼は俺に、なるべきは戦士だと
己とは捨てるものではない、如何なる苦痛の中でも常に揺らがぬものでなければならないと叱った
俺が戦士に成れなかったのは、己を捨てたのは
……きっとあの時、彼女から逃げようと抗ったから。
彼女と暗闇を進むと決めたのなら、それに伴う苦痛すら受け入れる……その覚悟があの時の俺には無かったんだ。
だから変わる。彼女の呪いを、全てを受け入れる自分に……今この場で変わろう。
丁度いい単語は、さっき乱入してきた誰かが口にしていたアレしかない。
『・・・let’s』
深呼吸を一つ、ベルトにディスクを装填し、己の胸に握り拳を添え………
「──変革しろ、未熟な自身を──」
掛け声と共に拳を解き放ちベルトの蓋を閉じる
『play back music』
音声と共に押し寄せる全身への苦痛、だがこれは全て……クロエさんのものだ、なら恐れるな、受け止めろ、受け入れろ
……死さえ受け入れた俺が
呪いの一つ、受け入れられない道理はない
「……ああ」
呪いの、その先へ。明かり無き道の始まりへ到達する。
呼吸が、鼓動が安定する。
視界が、思考が冴え渡る。
今の俺なら……きっと、この無明の中でも正しい道を歩み続けられるだろう。
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