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side─A(ngel)
「……で、帰れなくなって俺の気配を辿って此処まで来た、と」
乾いた喉を潤すように一口。
消耗した身体に筋肉を作る神秘の飲み物、プロテインを流し込んだ後、俺は来客用の椅子に腰掛けている女性に重い頭を押さえて念押しで確認する。
「……私も格好つけて別れた手前、この現状を受け入れ難いのですが、なにぶん私も今回が初の人界だったので……」
女性は顎を指でなぞりながら唸るように考え込んでいたが結局諦めたようにため息をついて手を合わせる。
「何か不備が起きたみたいで帰れないし、
人界には貴方しかアテがありませんので
……ので!」
「成る程。
それで、わざわざあの段ボールに入ってたってのかセンパイ?」
仮にも天使が人間相手に懇願で手を合わせるのは如何なものか?
目の前のセンパイ……エルゥの姿に、気づけば俺の表情はひきつっていたようだ。
「あの箱に入った家無き者の懇願を人は断れないと天界で学んでいたので実践してみました」
「……馬鹿、いや馬鹿真面目……なのか?」
「な、何がですっ!?
実際に後輩は私を家に入れてくれたじゃないですかっ!?」
そりゃ教会前にあんな箱、しかも女性が入ってるものを放置すれば色々とまずい。
主にご近所の冷たい視線やら警察沙汰に直結しかねない。
「別に天使様達に異議申し立てしたい訳じゃないが、そりゃ犬猫を拾わせる為のやり口だ
人間、ましてや高尚な天使様に関しましては二度と実践しませんことを御祈り申し上げます 」
皮肉混じりの敬称と、常識の間違いに
センパイは呆然としたかと思うと机に顔を埋めてしまった。
……少し、言い過ぎたか……?
「ま、まあ丁度良くもあったか。
色々と訊きそびれてたしな……センパイ側から来てくれたのは助かる」
「!、ほ、本当ですか……!
えー、コホン。では後輩よ、何が訊きたいんですか?」
「ああ。まず……あのエクシアって天使の件なんだが、彼女は何故堕天使になった?」
俺の問いにセンパイの表情から笑みや、困惑と言った余分なものが一瞬にして消えた。
つらいだろうな。
だが、今後の為にも俺達は一度情報を整理する必要があるだろう。
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