第五夜 世界終末時計

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 アメリカに『世界終末時計』というものがある。  世界の終末を便宜的に午前0時と定めて、その終末までの残り時間を『零時まで残り何分』という形で象徴的に示す時計である。  核開発や戦争の脅威に対する警告を目的とし、運営管理している団体が定期的に残り時間を発表している。  ちなみに2019年4月時点で、時計の針は零時まで残り3分となっている。人類にとって『最後の3分間』ということだ。  だが、3分しかないからといって悲嘆にくれることはない。なぜならば、世界を取り巻く状況が変われば、時計の針は進んだり、また戻ったりもするからである。  つまり人類はその都度、正しい判断をしなくてはいけないということである。  2019年5月――あれほど頑なまでに強硬姿勢を貫いていた北朝鮮が、財政支援を受ける代わりに、核兵器の破棄に応じた。世界終末時計の針は少しだけ戻り、零時まで残り5分となった。  2019年7月――長年国境付近で戦闘を続けていたインドとパキスタンの両国の間で、歴史的な和解が成立し、両国が核兵器の破棄に応じた。世界終末時計の針は少しだけ戻り、零時まで残り15分となった。     
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