第ニ夜 エイプリルフール広告

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『〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇!』  刺激的なキャッチコピーが付いた広告の見本を見て、ぼくは我が目を疑い、次に言葉を失い、そして唖然としてしまった。このキャッチコピーの生みの親である、隣に立つ所長に問うような視線を向けると、所長は大変満足気な表情を浮かべていた。どうやら、このキャッチコピーをいたく気に入っているらしい。  食料供給研究所――。それがぼくと所長が所属している研究機関の名称である。その名前が示す通り、日本国内において国民にしっかり食料が滞りなく行き渡るように研究している機関である。  昨今話題になっている食品ロスの解決策についてが、目下、一番の課題であった。だからこそ、所長もこのような奇をてらったキャッチコピーを考えたのだろう。しかし、あまりにもセンセーショナルで、刺激が強すぎはしないだろうかと危惧せざるをえなかった。 「所長、もしもこのキャッチコピーの広告をこのまま新聞の全面に出したら、絶対に広告を見た読者から大量のクレームが殺到しますよ!」  ぼくは所長に懸念を示した。 「君は今の世界の食料事情を分かったうえでそう言ってるのかな?」  所長は落ち着いた声で逆に訊き返してきた。     
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