少女の涙

1/2
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

少女の涙

「マリーナァァァァァ!!」  マリーナに食らいつこうとした顎に、盾として腕を差し入れる。  激痛。皮膚と筋肉が裂け、牙が突き破ってくる。――ああ、これはもう左腕はダメかな。  しかし、これくらい安いものだ。  跳ね上げた刀身は狼の体を斬り飛ばし、遠くへ追いやった。赤色が飛び散り、濃い血の匂いが充満する。  狼達は甲高い悲鳴を上げると、洞窟の奥へと逃げていく。戻ってくる様子はなかった。 「マリーナ、無事ですね。よし、よかった」 「カルラ……? なんで……?」  マリーナは呆然としてるが、怪我はない。  なんとか間に合ったようだ……。 「……これは儀式でなく口減らし、そうだったんでしょう? ハゲジジイが言ってました。村民になるなら知る権利があるとかで」 「そう……だけど。でも――」 「なら私は、神とやらが現れるまで、あなたを護り続ける義務があります。私は“口減らしの為”だなんて、約束はしていません」  私はマリーナの体に触れて、目の高さを合わせるよう膝を曲げる。 「だからその日まで――あなたには、生きていてほしいです。私を嘘つきにしないで、マリーナ」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!