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少女の涙
「マリーナァァァァァ!!」
マリーナに食らいつこうとした顎に、盾として腕を差し入れる。
激痛。皮膚と筋肉が裂け、牙が突き破ってくる。――ああ、これはもう左腕はダメかな。
しかし、これくらい安いものだ。
跳ね上げた刀身は狼の体を斬り飛ばし、遠くへ追いやった。赤色が飛び散り、濃い血の匂いが充満する。
狼達は甲高い悲鳴を上げると、洞窟の奥へと逃げていく。戻ってくる様子はなかった。
「マリーナ、無事ですね。よし、よかった」
「カルラ……? なんで……?」
マリーナは呆然としてるが、怪我はない。
なんとか間に合ったようだ……。
「……これは儀式でなく口減らし、そうだったんでしょう? ハゲジジイが言ってました。村民になるなら知る権利があるとかで」
「そう……だけど。でも――」
「なら私は、神とやらが現れるまで、あなたを護り続ける義務があります。私は“口減らしの為”だなんて、約束はしていません」
私はマリーナの体に触れて、目の高さを合わせるよう膝を曲げる。
「だからその日まで――あなたには、生きていてほしいです。私を嘘つきにしないで、マリーナ」
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