ふたりの少女

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 ……沈黙に耐えかねたのか、向こう側から対話は再開する。 「か、カルラさんと口聞いちゃダメって、お父さんに言われたから……」 「そうですか。では、黙ります」 「ええ!? こ、困る! 寂しいし、その……」  何故か驚いていたが、宣言通り私は口を引き結んで目を閉じる。  ――のだが、壁の向こうから、あ゛ー、だとか、う゛ー、だとか微かに聞こえてくる。言いたいことがあれば言えばいいものを。 「で、でもでも、感謝はちゃんと伝えなさい、って言われたから。例外というか、なんというか」  感謝?  私は目を開き、再び格子窓を見上げる。  すぅ、と大きく息を吸う音。そして、 「その。ありがとう、ございました! “羊喰い”、やっつけてくれて! それにいつも、村を護ってくれて! はい、例外終わり!」  言い切った後、はぐ、なんて力いっぱい口を閉じたような音が微かに聞こえた。それっきり静かになる。  しかし……ああ、そうか。  感謝なんて、されたことなかったっけ。  だから、なんだか、こそばゆくて、 「……ふふ」  小さく、声に出して笑ってしまった。 「あ! なに笑ってるのよう!」 「喋っていいんですか?」 「こ、これも例外だし! 特別だし!」  その後、例外に例外が重なり、いつの間にやらマリーナとは普通に言葉を交わすようになった。
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